東お多福山とは
東お多福山は六甲山地の南東部に位置する頂(いただき)の一つで、神戸市と芦屋市の市域にまたがって位置しています。山頂部には六甲山地最大の面積を誇る草原が広がっています。
戦後まもなくまでは80ha以上の面積を誇るススキ草原で、キキョウ、スズサイコ、オミナエシ、ワレモコウ、オケラ、ツリガネニンジン、オカトラノオ、オトギリソウ、リンドウなどの草原生植物が多数みられる環境でした。
このススキ草原は、茅を得るための刈り取りによって保たれていました。
戦後失われていった草原の生物多様性
しかし、戦後の生活様式の変化によりススキ草原の価値が見いだされなくなり、草原と人との関わりは失われました。
その結果、開発や植林、森林群落への遷移によって草原面積は82.9ha (1948年)から9.2ha(2007年)にまで縮小してしまいました。
また優占種もススキからネザサに置き換わり、草原生植物の種数も個体数も激減してしまいました。
かつてのススキ草原の姿を取り戻すために〜
このように危機的な状態にあった東お多福山草原でしたが、メンバーが調査したところ、林道沿いなどにわずかに草原生植物が残っていることが分かりました。
そこで、残された草原生植物を守り、植物豊かなススキ草原を再生することを目指して、2007年秋より草原の一部区域でネザサの試験的な刈り取りを開始しました。
試験的なネザサの刈り取りの様子
3年間の試験の結果、ネザサの刈り取りによってススキや草原生植物の種数や被度(葉の広がり)が回復することが確認されたため、2010年から徐々に管理面積を拡げています。
年1回の定期的な刈り取りを続ければ、東お多福山にかつてのようなススキ草原を復元することが出来ると確信しています。
草原を守り・楽しみ・引き継ぐ仲間を増やしたい
よみがえった草原の中で過ごしたら、どんなに心地よいでしょうか?スミレやササユリ・キキョウなど四季折々の花が咲きススキの穂が風になびく草原。家族や友人と訪れてのんびりと過ごす草原。小鳥のさえずりやチョウの舞う姿、バッタの跳ねる様子を心ゆくまで観察できる草原…
私たちはこのような草原の魅力をより多くの人たちと共有したいと考えています。特に、東お多福山草原が都市近郊にあることを生かし、レクリエーションの場や動植物について学ぶ環境学習の場として活用することも目指しています。
また、阪神間では、茅葺き屋根の葺き替えに必要な茅の地産地消が困難な状況となっているそうです。私たちは東お多福山のススキ草原を、いつか阪神間の文化財の茅葺き民家への茅供給地としてそだてていくことも夢見ています。
東お多福山に訪れる人が少しでも増え、今後草原を引き継いでくれる仲間の輪がひろがるよう広報活動にも力を注いでいきます。